雨へのオマージュ
Vol.11 2016 水無月 雨へのオマージュ
日本で6月、といえば、雨期。
水無月の“無”は、無い、のではなくて所有格の“の”らしいです。
“水の月”つまり雨の月。
でも、雨大好き!と言うかた、あまり聞きませんね。
雨が続いてうっとうしい、髪の毛が広がる、洗濯物が乾かない、というマイナスイメージのほうが多いでしょうか。
とはいえ雨が全く降らない日が続くと、山火事や干ばつ、水不足を引き起こしてしまいます。
雨は、森林や穀物の成長・維持に必要なのです。
ひと雨ごとに植物がぐんぐん伸びるこの季節。
雨を受けてひときわ活き活きしているように見えるのが「紫陽花」。 同じ品種でも、咲く土壌によって花の色が変わると聞きますよね?まるで人間のようです。
今月のSALUTでは、山火事や水不足が起きないよう、そして紫陽花たちが悦ぶよう!雨へのオマージュ(敬意)を捧げます。
控えめながら透明感のある色合わせのSALUTトレイを土壌に見立て、清らかで可憐な紫陽花を添えました。その紫陽花に潤沢な雨をもたらす水源は、海、はたまた空や月のようでもある澄んだトルコブルーの器。海底から引き揚げたような釉薬が、観る者それぞれの海馬を呼び覚まします。
この器の作家、鈴木麻起子さんは、わたしも敬愛する陶芸家ルーシー・リー(Lucie Rie)の作品に影響を受け、独学で作陶を習得されたとお聞きしました。
幅広な口径に対して狭い高台のバランスは、まさにルーシー・リーの作風。女性らしい曲線的なフォルム、という印象でしたが、それもそのはず。
鈴木麻起子さんの器の制作コンセプトは「女性に優しい器であること」、そして「この器のまわりが、笑顔が集う場所になれますように」なのだそうです~素敵。
凛とした外見だけでなく、周囲への心配りを忘れない、women-friendlyな器さんなのでした。
紫陽花は、生花だけではなく、食べられるものも用意(笑)。
生菓子は、雨露まで表現されているのが心憎い鶴屋吉信さんの 「あじさいきんとん」。
そしてもう一方は、四季折々のキャンバスを描くなら何でも揃う、甘春堂さんの干錦玉シリーズから「あじさい」。
“干錦玉”は、ゼリーの表面を凍らせたようなシャリッとした食感と透明感が身上。
心躍る紫陽花の世界が広がりました。雨音が心地よいものに変わりそうでしょう?
6月30日、日本各地の神社で「夏越しの祓い(なごしのはらい)」が行われます。
半年間の邪気を払い、その後半年の健康を祈る日本の行事ですが、今年は日本各地、世界各地で辛い思いをする方々の厄除けと健康を願う機会にしたいものです。
★生菓子:京果匠 鶴屋吉信 「あじさいきんとん」
★干菓子:京果匠 甘春堂 「あじさい」
★モザイクトレイ : bottega MOSAICI by Studio Mosaico
Selected & Commented by Megumi
Photos by Tomoko
Tray & Supervised by Mihoko